“個”のツボ

ちょっとだけ興隆の兆しを見せた音楽のラベリング方法がある。
“ロック”や“ポップス”などというジャンル分けするのではなく、“気分”で分けるのだ。
“切ない気分”や“楽しい気分”などなど。

これは、リスナーへの楽曲検索方法の提供の仕方の新種だったのだけれど、どうも見かけるところどのサイトもうまくいかなかったみたいだ。

それはたぶん、人は例えばある楽曲を初めて耳にした時に、「あぁ、自分はこういう曲が聞きたかったんだ」と思うように、外からの働きかけに対して初めて意識上に現れる潜在的な欲求のようなものを持っているからなのではないだろうか。
そしてそれを自ら掘り起こして意識することは難しく、過去に聴いた曲ならば「あぁ、あの曲を聴きたい」と思う時にはそこに気分を意識することは可能な性質。

それは音楽に限らず、ありとあらゆるものに通じる性質なのかもしれない。
「あぁ、こんなデザインの洋服が欲しかったんだ」と、それを目の前にした時に初めて感じられるように。

ただし、ある程度好きな傾向というのはあって、そこには共通するその人独自のツボみたいなものがあって、そこにはまるとその送り手のファンになり、それに触れることで満たされる何かを潜在的に有しているのかもしれない。